カバによって作られた湿地帯の細い通り道、パピルスの間をすり抜けながら、それこそカバになったような目線で進んでゆくモコロボート。
エンジン音もなく、耳に入ってくるのは鳥のさえずり、風にそよぐ木々の音、そして進むボートの水を割る心地よい音だけ。
完全に自然と一体になれるような空間がそこにはある。
オカバンゴ・デルタの名物といえば、伝統カヌーのモコロボートでしょう。
このモコロボートは、バナナ型にくり抜かれた木製のカヌーで、デルタ周辺の村の人たちは、日常的に愛用している交通手段です。
オカバンゴ・デルタは湿地帯で水深も浅いため、オールで漕ぐ、というものではなく、ボートの端に立って、長い棒で水底をつつきながら進めていくタイプのボートです。
ただ、ボートの長さもあるため、バランス感覚がとにかく大事。
ボートを漕ぐ人をポーラーと呼びますが、このポーラ―の他に、乗船者2名というのが安全にクルーズできる定員数です。
村では時々、大量の荷物を移動させるためにこのボートを使うので、抜群のバランス感覚が必要になります。しかし、オカバンゴ・デルタで生まれ育ったポーラーたちにとっては、大して苦にならないでしょう。
同時にここは、ワイルドライフの宝庫です。
浅い湿地帯では多くのカバが生息し、水面から私たちを見ています。時には、ゾウが水を横切ることもあるでしょう。
その距離間などを考えて、時にはうまく逃げる技も必要になります。
とにかく、操作はプロのポーラーに任せて、私たちは安心してこのモコロボートに座り水辺の自然を体験します!
なお現在では、自然保護の観点からも、木製のボートは使用しておらず、ファイバーグラス製のボートで、今日も旅行者を神秘の世界へ連れて行ってくれています。